きりくちぶろぐ

好きなきりくち(切り口)から、漫画、映画、本、思想、事柄を語ったり、やってみたり

仕事における「信頼」ってなんだろう?

「信用じゃなくて信頼が大切なんだ!」

 

「お客様に信頼される商品を作りたい!」

 

「信頼し合えるチームこそ理想のチームだ!」

 

「それは信頼貯金が減っちゃうよ!」

 

「これからは信頼(信用)経済だ!」

 

こんな風に「信頼」って言葉はものすごく沢山使われている。

そしてなんとなく全部正しいような気がする。

ただ、僕は仕事でも

「やまだは信頼できない」

と言われたことがありますが、そこで彼が言う「信頼」と僕が考えている「信頼」はどうも違った意味な気がするんですよね。

それに「信頼」って言葉を使ったら急にそれ以上考えなくてもいいような風潮もあってなんか嫌だなーと。

そんなことを考えながら悶々としていて、これはもう「どげんかせんといかん!」と本腰入れて考えることにしました。

 

そしたらなんとめちゃくちゃスッキリしたので、「信頼」って言葉に違和感を持っている人は是非とも読んでやってください。

 

 

1 「信頼」の定義

まずね、「信頼」の定義が大事だと思って調べました。

定義がちゃんとしていないと、みんなの頭のなかにあるそれぞれの「信頼」で対話することになって、全然噛み合わないから。

 

では、デジタル大辞泉さんから

[名](スル)信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち。

信頼(シンライ)とは - コトバンク

 

いや、うん、そりゃそうでしょ。漢字ばらしただけやん。

 

次に、みんな大好きwikipediaさん

信頼(しんらい)とは、相手を信用し、頼りにすること。信用とは見返りを求めない事。

信頼 - Wikipedia

 

急に信用の話まで出てきて、これを噛み砕くと

相手を見返りを求めることなく頼りにすること

となって、全く意味がわからない。。。

 

ちょっとこれだと埒が明かないということで、論文的なものも読んでみることにしました。

 

 

 

2 社会心理学的アプローチによる「信頼」

まず、ここに信頼の全体像があると思って下さい。(仮にtrust squareとしよう。)

 

f:id:Manga_Maestro:20171117145345p:plain

 

今みんなが使っている「信頼」はこの中のどこかに位置付けられると思います。

これをいくつか分けていきます。

 

 

「自然秩序に対する期待」と「道徳的秩序に対する期待」

このtrust squareは、「自然秩序に対する期待」と「道徳的秩序に対する期待」に分けることができます。

f:id:Manga_Maestro:20171117145607p:plain

#自然秩序に対する期待

これは、「明日も太陽が昇ることに対する期待」とか「重力があるところだと上から下にものが落ちることに対する期待」とかを想像してもらえたらと思います。

日本語だとあまり「信頼」ぽくはないですが、英語のtrustだと入るっぽいですね。今回はあまり気にしなくて良しです。

 

#道徳的秩序に対する期待

これはさらに「能力に対する期待」と「意図に対する期待」2つに分けることができる。

 

 

「能力に対する期待」と「意図に対する期待」

f:id:Manga_Maestro:20171117145711p:plain

 

#能力に対する期待

これは、「社会生活において出会った相手が、役割を遂行する能力を持っているという期待」のことをいいます。

たとえば、「電車の運転手が時間通り安全に運転してくれるという期待」や「コンビニの定員がお釣りを間違わずに渡してくれるという期待」などを指す。

 

 

#意図に対する期待

これは、「相手が信託された責務や責任を果たすことに対する期待」をいいます。

たとえば、「政治家がちゃんと政治をしてくれる期待」があって、仮に「政治家は信頼できない」というときは、政治家に政治を行う能力がないと言っているわけではなく(そういう場合もありますが)、自己の利益を優先してしまうんじゃないか?と思っているのでこちらになります。

 

そしてこれはもうあとさらに「安心」と「信頼」に分けることが出来ます。

 

 

「安心」と「信頼」

f:id:Manga_Maestro:20171117145741p:plain

 

#安心

ここにいう「安心」とは、「客観的に見て、相手が責務や責任を果たすことで、相手自らの不利益を避けることになるような場合の期待のこと」をいいます。

たとえば、「対向車線を走る車が反対車線に飛び出てこない期待」は、ここにいう「安心」になります。なぜなら、対向車線を走る人は反対車線に飛び出てくることで自らの命や財産を失う恐れがあり、その不利益を避けるために反対車線に飛び出てこないからです。

これは一見すると「信頼」しているようにも見えるのですが、客観的な情報から合理的に判断できるので、「信頼」と分けて「安心」と呼びます。

 

 

#信頼

ここにいう「信頼」とは、「客観的な行動予測を超えて、相手が信託された責務や責任を果たすことに対する期待」のことをいいます。

 

つまり、信頼する側からすれば、合理的に説明できないけど、相手が頼んだことをしっかりやり遂げてくれると思っている状態を「信頼」といいます。

 

 

つまり、、

僕らが普段「信頼」って言葉を使っていても、それが自然に対してなのか、能力に対してなのか、安心なのか本当の信頼なのか正直ごちゃまぜに話していることがわかると思います。

ごちゃごちゃでもいいこともありますが、ちゃんとどこの「信頼」について話しているのかを特定するとより深い議論ができるのかと。

 

なお、"本当の「信頼」"としてますがそれ以外が一般的な信頼から外れるわけではなく、便宜上ということをご了承ください。

 

 

これらのまとめは(あまり正確に理解できないかもですが)多分にこちらの論文によっております。ご興味あれば是非とも。

信頼の意味と構造 

 

 

 

 

 

3 仕事における「信頼」

では、仕事における「信頼」はこれらのどれを指しているのでしょうか?

f:id:Manga_Maestro:20171117145741p:plain

「自然」でないことは明らかだけど、「能力」「安心」「信頼」のいずれかは明確にわけられていないと思います。

 

 

能力に対する期待

これは仕事で言うと、

「あのコンサルタントの仕事は信頼できる」

「あの弁護士の法的解釈は信頼できる」

「あのドライバーの運転は信頼できる」

みたいに信頼を使っている場合がそれに当たります。

 

会社内でいうと

「彼が作ってくれる資料は信頼できる」

「彼女は絶対にPJTを遅延させないと信頼できる」

「彼の意思決定は、信頼できる」

みたいなものですね。

 

これらは、その企業や専門家や上司や部下がある特定の「役割を遂行する能力を持っている」と期待していることであり、その人達がどんな意図を持っているかとは無関係に成り立ちます。

 

どんなに女の子にだらしないやつだとしても、彼が作る資料がいつも一定の水準を超えている場合には、やはりその部分では、「彼を信頼する」、みたいな感じですね。

 

安心

これは仕事で言うと

「(このタイミングで他に頼めるライターいないだろうから、)この案件をうちに先方が頼んでくることは信頼してもいい」

「(もし今うちを裏切ったら、業界的に干されるから)信頼して大丈夫」

「(ブランド低下するから、)体に悪いものが入っていないと信頼してもいいと思うよ」

とか。

 

会社内で言うと

「(ここで仕事を完成させないと、彼の評価は下がるから、)完成させることを信頼していいと思う」

「(不誠実な態度をとることで、彼女のチームは崩壊し、彼女がやりたかったことが叶わなくなるから、)誠実な対応をしてくることを信頼していい」

「(ボーナスに影響するから、)しっかり仕事をすると信頼している」

などです。

 

これは、( )の中身を言葉にすると、信頼していない感じが出るんですが、( )を話さないと、一般的に信頼として使っている場面にもなると思います。

 

参考:Googleのこの話はここに位置づけられるんじゃないかなーと。

What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team - The New York Times

日本語の解説はこちら

グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ

 

 

本当の「信頼」

これは仕事ではあまりありえないんじゃないんでしょうか。

強いて言うならば、熱狂的なファンが、アイドルや特定企業の製品を、彼ら彼女らだからという理由だけで信じているような場合くらいかと。

また、会社内でいうと、絶対的なカリスマ経営者の言うことを盲目的に信じているような場合。

 

通常の仕事における信頼としてここまで含めてしまうことこそが、「信頼」についての議論を複雑にしているのではないかと思っています。

 

ここまでをまとめると、、

つまり、仕事における信頼は、「能力」と「安心」の部分だけであり、「信頼」は含まない方がいいのかもしれません。

 

   仕事における信頼部分

f:id:Manga_Maestro:20171118224916p:plain

 

ということは、ものすごく矛盾して聞こえるかもしれないですが、

 

仕事における信頼は、「信頼」ではない。

 

のかもしれない。

「能力における期待」や「安心」は必要だとしても、予測可能性を超えた部分での期待までは不必要。

そう言えるのかもしれません。

 

今までは、本当の「信頼」まで仕事における信頼として取り扱っていたため、

 

もっと信頼してほしい!

 

という解決策のない悲鳴が色んな所で飛び交っていたんじゃないだろうか。

 

それに、

「お前のこと信頼しているから任せる」

と成功確率が高いか低いかとは別に任せる場合

「(これだけ一緒に働いて尊敬する上司である自分への裏切り行為になるくらいなら、一生懸命やることは間違いないから、その結果失敗しても仕方ないとして)お前のこと(一生懸命やることについては)信頼しているから任せる」

んだと思うんですよね。これは「安心」であって「信頼」ではないですよ?

もちろん例外はあるけど

 

 

 

4 仕事における「信頼」を得るには?

じゃあ、どうすればいいのか?

今までは仕事における信頼を得るために、飲みに行くだとか相手のことを思いやるだとかそういうアドバイスが多かったんですが(そしてこれはこれで大事なんですが)、「能力」と「安心」の場合、予測可能性を高める情報を提示していくことがそのまま仕事における信頼を高めることになる。

 

たとえば、「集合時間に遅れない」

これを繰り返すことで、「期限を守る」という予測可能性が高まり、「仕事を締め切りまでに終わらす」という期待が生まれ、「彼の仕事は信頼できる」となる。※能力に対する期待

 

また、「悪口を言わない」。

これを繰り返すことで、自分のことも悪く言われていないという予測可能性が高まり、「いいチームが創れる」という期待が生まれ、「一緒の仕事をするに足る人物だと信頼される」。※能力に対する期待

 

他にも、「一緒の時間を増やす」

これを繰り返すことで、なんらかの事象が生じたときに「あの人なら、きっとこういう判断/行動をするだろうなー」という予測可能性が高まり、あの人なら困ったときもきっと助けてくれる等の期待が生まれ、「あの人はいざとなったら助けてくれる信頼できる人だ」となる。※能力に対する期待

参考:人間の五感は「オンライン」だけで相手を信頼しないようにできている──霊長類の第一人者・山極京大総長にチームの起源について聞いてみた | サイボウズ式

 

さらに、「価値観を共有する」。

これを繰り返すことで、誰かに不誠実なことをするくらいなら自分が損をする人だということが予測可能になり、不誠実なことをやったら儲かる場合でも彼はそれをやらないという信頼が生まれる。※「安心」

 

 

「何を当たり前のことを・・・」

と思うかもですが、やっぱりみんなが直感で大事だと思っていたり、やってよかったとおもっているようなことっていうのは、意味があるんでしょうね。

こんな風に整理しなくてもわかって実践できてるんなら全然いいんですが、僕は頭でも納得しないと動けないので整理してみました。

 

 

5 おわりに

こんなふうに

仕事における信頼は、「信頼」ではない。

なんて割り切ったふうなことを言った後になんなんですが、本当の「信頼」で結ばれたチームが仮に出来たらめちゃくちゃ素晴らしいですよね!

「能力に対する期待」や「安心」のように予測可能だからこそ相手の行動を期待するのではなく、ただ単に

 

いやー全然わかんないし、どんな事が起こるかなんてのも全く予想もつかないけど、信頼するこいつらと一緒にこれに挑戦できたら最高だよね!

 

と言い合えるチームで冒険できたらなと改めて思いました。

 

 

 

とまー「信頼」がゲシュタルト崩壊してきたところで筆を置きます。

おあとがよろしいようで。

 

目次:きりくちぶろぐの目次

 

関連記事:Facebookでアンケートを募る行為は、信頼貯金の切り崩しだと思う

 

よく読まれている記事:

【2017年】今まで買ってよかったモノ・サービス20選【9.29更新】

【2017年】今まで買ってよかった本46選【10.9更新】

【2017年】今まで読んで感動した漫画本37選【8.10更新】

弁護士を辞めました。

株式会社アカツキを退職しました。

「モテる」というきりくちで

地方で生きるというきりくちで

凄い人と優秀な人の違い

弁護士が選ぶ今年読むべきオススメ漫画100選